保証契約はリスクのみ 親切心で保証人にならないで!

契約トラブル

 みなさんは、保証人って聞いた事ありますか?

 保証人に対するイメージはどのようなものですか?

 人によっては、保証人なるとやばい、自宅を失った、家族崩壊などのイメージがあるかもしれません。実は、そのイメージはあながち間違いではありません。

 今回は、知っているようで知らない、保証人について、メリット・デメリットなどについて解説します。

目次

保証人になるメリット・デメリット

 保証人になるメリットってあるのでしょうか?

 いきなり結論を言えば、保証人になるメリットはありません

 保証人にはデメリットしかありません。それもかなり深刻なデメリットです。

 保証人は、連帯保証人であろうと、単なる保証人であろうと、他人の借金を肩代わりする可能性のある立場に違いはありません。

 連帯保証人の方が、より保証人の責任が重く、デメリットが大きいといえます。

1 では、保証人は誰にメリットがあるのでしょうか?

 保証人がつくことで、債権者が債権の回収手段を複数確保できるので、債務者に融資をしやすくなります。

 その意味で、債権者にとって、保証人はメリットがある制度です。

 また、債務者も、保証人がつくことで、債権者から融資を受けられようになるので、債務者側にもメリットがあります。

 このように、保証制度は、債権者と債務者にメリットがある制度です。

2 保証人のデメリット

 保証人は、債務者が借金の返済をしなくなった場合に、債務者が負った借金について、肩代わりしなくてはいけません(民法446条1項)。

 借金をせずに真面目に生きてきた人が、親切心から友人の事業の借入に関する保証人になったとします。

 その友人の事業が失敗して友人が借金を返済できなくなると、保証人のあなたが多額の借金の返済を肩代わりせざるをえなくなるのです。

 その結果、保証人も友人と同様に自己破産をしたり、一家離散し、最悪の場合、自殺にまで至るケースもあります。

 このように、保証契約は、非常にリスクのある契約なので、保証契約は、書面でしなければならないと法律で規定されています(民法446条2項)

根拠条文:民法446条(保証人の責任等)
 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

3 ことわる勇気を!

 このような不測の事態に巻き込まれないためには、あなたが、誰かから保証人になるよう頼まれた場合、はっきりと断ることをお勧めします

「絶対に迷惑はかけないから。」

「借金は必ず返せるので大丈夫。」

などと泣いて頼み込まれても、はっきりと断る勇気をもってください

 「絶対」とか「必ず」という言葉は何の保障もありません。

 あなたが保証人になることを拒否したことで、その人の事業が立ち行かなくなったとしても、それはあなたの責任ではありません。

 遅かれ早かれ、その事業は失敗する運命だったのです。

 4 2020年4月1日の民法改正

 2020年4月1日に改正民法が施行されたことで、保証人のルールが変わりました。

 改正後は、事業用融資の保証の場合には、公証人による意思確認手続が必要となりました。

 改正前と比べて、保証人が、予想外の不利益を被らないようにする内容に変更されています。

 ですので、今後は、上記に書いたような、友人の事業の借金の保証人に安易になってしまうという事態は回避できるようになりました。

 とはいえ、保証人にはならいのがベストなことには変わりありません。

 保証制度は、保証人にとってリスクしかない制度ですので。

連帯保証人とは?

 連帯保証人と単なる保証人の違いは何でしょうか?

 端的に説明するならば、連帯保証人は、保証人よりも重い責任を負う制度です(民法454条)。

 連帯保証人になるメリットはありません。

 保証人と連帯保証人は、主に、以下の3点で異なります。

 そして、以下の違いは、すべて連帯保証人のリスクの説明になります。

1 催告の抗弁(民法452条)が使えない

 債権者がいきなり保証人に対して借金の返済を請求をしてきた場合,保証人であれば、まずは主債務者に請求してくださいと主張することができます。これを、催告の抗弁(さいこくのこうべん)と呼びます。  

 一方、連帯保証人はそのような主張をすることができず、債権者に対し、返済しなければなりません。

根拠条文:民法452条(催告の抗弁)
 債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。

2 検索の抗弁(民法453条)が使えない

 主債務者が返済できる資力があるにもかかわらず返済を拒否した場合、保証人であれば主債務者に資力があることを理由に、債権者に対して主債務者の財産に強制執行をするよう主張することができます。これを検索の抗弁(けんさくのこうべん)と呼びます。

 一方、連帯保証人はこのような主張をすることができず、たとえ主債務者に資力があったとしても、債権者対し、返済しなければなりません。

根拠条文:民法453条(検索の抗弁)
 債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。

3 分別の利益(民法456条、同427条)がない

 保証人が複数いる場合、各保証人は借金の額を保証人の数で割った金額についてだけ、返済義務を負います。これを、分別の利益(ぶんべつのりえき)と呼びます。

 一方、連帯保証人は複数いる場合でも、各保証人は借金全額について返済する義務を負います。

根拠条文:民法456条(数人の保証人がある場合)
 数人の保証人がある場合には、それらの保証人が各別の行為により債務を負担したときであっても、第四百二十七条の規定を適用する。

民法427条(分割債権及び分割債務)
 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

4 まとめ

 このように、連帯保証人は、保証人よりも重い責任を負いますので、リスクの高いものであることを覚えておいてください。

 保証人であれ、連帯保証人であれ、気軽になるものではありません。

 連帯保証人になるメリットはありませんし、リスクは重大です。

物上保証人とは? 

1 物上保証人とは

 物上保証人(ぶつじょうほしょうにん)とは、他人の債務(借金)のために、自分の所有する財産を担保に差し出すことをいいます。
 自分という人間が保証するのが保証人、で保証するのが物上保証人という事です。

2 物上保証の種類

 物上保証の方法として、質権と抵当権の設定があります。

 宝石、高級時計などの動産であれば質権を、土地・建物などの不動産であれば抵当権を設定します。

 実務では、不動産に抵当権を設定する物上保証の場合が、多数です。

 物上保証人は、債務者が借金の返済が困難になった際、担保に入れた財産の範囲で、責任を負います。

 この点、債務者が借金の返済が困難になった場合に、借金の返済義務を負う、保証人・連帯保証人とは異なります。

 物上保証人は、担保に入れた財産を売却し得られた金銭が借金の返済にあてられるだけです。

 仮に、担保に入れた土地が1億円で売れた場合、借金が5000万円しか残っていなければ、残りの5000万円は、物上保証人のものになります。

 他方、担保に入れた土地が1000万で売れた場合、借金が5000万円あるとしても、物上保証人は残りの4000万円についての返済義務は負いません。

3 物上保証人と保証人どちらがリスクが高い?

 保証人と、物上保証人どちらがリスクが高いかと言えば、保証人の方がリスクが高いと言えます。

 なぜならば、物上保証人は、最初に担保に差し出した財産を失うだけで、借金を直接支払う義務を負うわけではないので、あらかじめ損失の程度・範囲が限定されているからです。

 これに対し、保証人は、債務者が支払いできなくなった段階で、残っている借金の支払義務を負うので、保証人になる段階で、あらかじめ、いくらの借金を肩代わりするか予想できません。

 保証人は、原則として、利息や遅延損害金も支払う義務を負うので、当初は予想もしない金額に膨れ上がっている恐れがあるのです。

4 物上保証人にメリットはない

 保証人の場合と同様、物上保証人にも何のメリットもありません。

 保証人や連帯保証人に比べれば、リスクが少ないというだけで、物上保証人にとっては、リスクしかない制度です。

 ですので、安易に、他人の借金のために、自分の財産を担保に入れるのことは慎重になるべきです。

まとめ

いかがでした?保証人になることはリスクしかないことがお分かりいただけましたか?

保証人のリスクについて、ポイントをまとめましたので、参考にしてください。

  • 保証人、連帯保証人、物上保証人になることは、デメリットしかない。
  • 連帯保証人は、保証人以上に重い責任を負わされるリスクがある。
  • 物上保証人は、責任を負う範囲が限定されているが、リスクに変わりはない。
  • 保証人には、安易にならず、断る勇気をもつこと。
  • 他人に保証人になることを依頼する状況の人は、早晩、財政破綻するリスクが高い。
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