民事裁判の流れを解説 〈訴訟提起から判決まで〉

目次

4 尋問期日

 次に、裁判の終盤に行われることの多い、当事者尋問(本人尋問とも言います)と証人尋問について、説明します。

尋問は、何のために行うのか?どういう意味があるのか?

 当事者尋問も、証人尋問も、証拠調べの手続きです。

 証拠として当事者の言い分を聞いたり、証人の話を聞いたりします。

 裁判の勝敗に関係する重要な争点に関する質問に答える場です。

 ですから、当事者がお互いに言いたいことを言い合う場ではありません。原告被告の代理人弁護士や裁判所から質問されたことに対し、答える場です。

尋問は、どのように行われているのか?

尋問を行う順番について

 まず、証人尋問と当事者尋問のいずれも予定されている場合、証人尋問から先に行うのが原則です(民事訴訟法207条2項)。

 次に、原告と被告の尋問については、原告から行うのが一般的ですが、被告から先に行っても法律上何ら問題ありません。

 原告と被告で、特段、どちらかを優先して行うべき事情がない場合が多く、その場合に、訴えを起こした原告から尋問を行うのが通例となっています。

当事者尋問の具体的な流れ

【主尋問】

 まず、あなたの依頼した弁護士から、重要な争点などについて、質問があります。それに対し、あなたが答えます。これを主尋問(しゅじんもん)といいます。

 自分の弁護士からの尋問は、事前に十分な打ち合わせを行いますので、ほぼほぼ出来レースです。

 弁護士により異なりますが、尋問日からだいたい1、2週間前に、弁護士事務所で予行演習を行えば、本番でも同じように出来ると思います(経験則)。これが、本番の1か月前に行ったきりですと、いざ本番で質問を忘れてしまって、回答に詰まったり、事前練習した時と違うことを答えたりする場合があります。

 主尋問の時間は、だいたい20分~45分位の事が多いですが、事件の内容や争点の数によって異なります。 

 なお、弁護士に依頼しないで、自分で訴訟を行う場合があります。これを本人訴訟と言いますが、この場合、自分に質問する人は、弁護士の代わりに裁判官が行います。

 本人訴訟の場合、事前に裁判所に、質問してもらいたい事項を書面で提出します。
 しかし、決して、裁判官はあなたの味方になったのではありません。あくまで中立の立場で、あなたの作成した質問を読み上げるだけですので、裁判官があなたに有利な質問を考えてくれたりはしません。

 ですので、効果的な質問を作成出来ないと、ほぼ意味のない尋問になる可能性があり、多くの本人訴訟の場合、その傾向があります。もっとも、本人は、全くそのことに気付いていませんが💦。

 

【反対尋問】

 次に、相手方の弁護士からの尋問になります。相手方からの尋問を、反対尋問(はんたいじんもん)と言います。

 相手方の弁護士からの質問は当然事前に打ち合わせていないので、どういう質問がとんで来るかは分かりません。

 答えにくい意地悪な質問がくることが殆どですので、怒り出す人も見受けられます。しかし、頭に血が上った時は、冷静さを欠いて、つい余計な事を答えてしまいます。それが、相手方の弁護士の戦略でもありますので、要注意です!

 ちなみに、尋問で失敗する場合のほとんどは、反対尋問です。

 この点、依頼した弁護士によりますが、相手方弁護士からの質問も、ある程度想定して、依頼者の性格や能力を踏まえて、対処法を事前にアドバイスします。弁護士としても、折角ここまできたのに、終盤で、依頼者に墓穴を掘ってほしくはありませんので。

 反対尋問の時間は、主尋問と同じか、その半分程度のことが一般的です。

【補充尋問】

 最後に、裁判官から、質問があります。これを補充尋問(ほじゅうじんもん)と言います。

 この時点で、すでに多くの質問がおこなれておりますので、裁判官が足りないと思う点を補充する意味で質問します。

 時間にして、だいたい5分程度です。

 しかし、この裁判官の補充尋問は侮ることは出来ません!

 裁判官は、最終的にどちらの言い分が事実かを判断する人ですから、その判断権者が、関心を持って質問した点が、裁判の勝敗を決める重要な部分なのです。

 裁判官が、当事者に質問した部分と当事者が回答した内容で、判決の方向性が分かることがあります。この感覚は、弁護士の経験を重ねる程、鋭くなります。

 最後にちょっと聞かれるものだからと言って、全く軽くみてはいけません。当事者は、裁判官の質問に対して、「何でそんなこと聞くの?」的な様子で、軽い感じで返答している場合がありますが、依頼した弁護士は、脇で青ざめている場合もあります。

証人尋問の流れ

 証人尋問も、当事者尋問と同様に、主尋問、反対尋問、補充尋問の順番で行います。

 主尋問は、証人申請をした側が行います。

 以上が、尋問手続のおおまかな内容、流れです。

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