【遺言の種類と特徴】 公正証書遺言と自筆証書遺言どっちが良い?

 遺言の種類は何種類あるか知っていますか?また、それぞれの遺言の違いについて知っていますか?

 遺言を作成するうえで、押さえておきたい重要なポイントは?

 そこで、今回は、遺言の種類とそれぞれの特徴について、弁護士が解説します。

目次

 普通方式

 遺言には、普通方式特別方式があります。

 普通方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

 一般的に多く利用されているのは、自筆証書遺言公正証書遺言です。

1 自筆証書遺言 

 自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)とは、全文(財産目録以外)を自分で書く遺言のことです。民法968条で規定されています。

自筆証書遺言の長所・短所

長所
  1. 自分1人で作成できる。
  2. 作成費用がかからない。
短所
  1. 作成要件を満たさず無効になる可能性がある。
  2. 遺言の内容が、不正確、曖昧、不明瞭な場合、有効性が問題になる。相続人間で紛争になる。
  3. 遺言書が、遺言者の死亡後、様々な要因で、紛失、破棄、隠匿等により発見されない可能性がある。
  4. 死後、家庭裁判所で検認手続が必要となる。 

 ※弁護士、司法書士、行政書士等の専門家に依頼して遺言書を作成した場合、上記短所の1から3の問題については解消されます。しかし一方で、専門家に遺言書の作成を依頼した場合、作成費用が発生しますので、長所の2は失われます。

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2 公正証書遺言

公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)とは、公証人が遺言者から遺言の内容を聞いて、それを筆記して作成する遺言です。
民法969条で規定されています。

公正証書遺言の長所・短所

長所
  1. 公証人が関与して作成するので、要件の不備により無効となる可能性はほぼない。
  2. 公証人が関与して作成するので、自分で文章を作成する必要がない。また、遺言書の内容が不正確、曖昧等により、無効となる可能性もほぼない。
  3. 遺言書が公証役場にも保管されるので、偽造、破棄される危険性がない。
  4. 死後、家庭裁判所の検認手続が要らない
短所
  1. 作成費用がかかる。
  2. 作成に証人2名の立会が必要であり、証人の立会費用が発生する場合もある。
  3. 自筆証書遺言に比べて、いつでも気軽に作成できない。

では、自筆遺言と公正証書遺言はどちらが良いでしょうか? 

【結論】
 公正証書遺言の方が良いです。

【理由】
 遺言者が亡くなった後、親族間で争いとなる事例の大半は、自筆証書遺言によるものです。
 自筆証書遺言は、いつでも簡単に作成できる反面、形式面と遺言の内容のどちらにも不備が発生しやすく、死後、相続人間で紛争になりやすいのです。
 自分が亡くなった後、親族間での争いを避けるために良かれと思って作った遺言書が親族間の骨肉の争いの原因になるというのは何とも皮肉なものです。
 遺言者の生前、兄弟間の仲が良かったのに、遺言者の死後、遺言書のせいで険悪な仲になってしますケースも少なくありません。
 ですので、多少の手間や費用がかかっても、公正証書遺言を作成することをお勧めします。

3 秘密証書遺言

秘密証書遺言(ひみつしょうしょいごん)とは、遺言の内容を秘密にして、公証人に遺言の存在を証明してもらう遺言です。公証人も遺言の内容は読まないので、遺言を誰にもしられることはありません。

民法970条に規定されています。

特別方式

 特別方式は、 死亡応急者遺言伝染病隔離者遺言、在船者遺言船舶遭難者遺言があります。

 特別方式の遺言は、緊急状態下に置かれた場合に作成できるものであり、普通に日常生活を送っている中で、作成するような場面はほとんどないでしょう。その意味で、あまり気にする必要はありませんので、参考までに。

 なお、特別方式の遺言は、遺言者が緊急状態下を脱し、日常生活に戻り、普通遺言を作成できるようになってから6か月間経過すると、効力を失います。

民法983条(特別の方式による遺言の効力)
 第九百七十六条から前条までの規定によりした遺言は、遺言者が普通の方式によって遺言をすることができるようになった時から六箇月間生存するときは、その効力を生じない。

1 死亡応急者遺言

民法976条に規定されています。

民法976条(死亡の危急に迫った者の遺言)
 疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人三人以上の立会いをもって、その一人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。この場合においては、その口授を受けた者が、これを筆記して、遺言者及び他の証人に読み聞かせ、又は閲覧させ、各証人がその筆記の正確なことを承認した後、これに署名し、印を押さなければならない。
 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、証人の前で、遺言の趣旨を通訳人の通訳により申述して、同項の口授に代えなければならない。
 第一項後段の遺言者又は他の証人が耳が聞こえない者である場合には、遺言の趣旨の口授又は申述を受けた者は、同項後段に規定する筆記した内容を通訳人の通訳によりその遺言者又は他の証人に伝えて、同項後段の読み聞かせに代えることができる。
 前三項の規定によりした遺言は、遺言の日から二十日以内に、証人の一人又は利害関係人から家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
 家庭裁判所は、前項の遺言が遺言者の真意に出たものであるとの心証を得なければ、これを確認することができない。

2 伝染病隔離者遺言 

民法977条に規定されています。

民法977条(伝染病隔離者の遺言)
 伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所に在る者は、警察官一人及び証人一人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。

3 在船者遺言 

民法978条に規定されています。

民法978条(在船者の遺言)
 船舶中に在る者は、船長又は事務員一人及び証人二人以上の立会いをもって遺言書を作ることができる。

4 船舶遭難者遺言

民法979条に規定されています。

民法979条(船舶遭難者の遺言)
 船舶が遭難した場合において、当該船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人二人以上の立会いをもって口頭で遺言をすることができる。
 口がきけない者が前項の規定により遺言をする場合には、遺言者は、通訳人の通訳によりこれをしなければならない。
 前二項の規定に従ってした遺言は、証人が、その趣旨を筆記して、これに署名し、印を押し、かつ、証人の一人又は利害関係人から遅滞なく家庭裁判所に請求してその確認を得なければ、その効力を生じない。
 第九百七十六条第五項の規定は、前項の場合について準用する。

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