遺言書が2通以上ある場合の対処法 どちらの効力が優先するの?

遺言書が、2通以上発見された場合、遺言書の効力はどうなるのでしょうか?

遺言書は、1通しか作れないというルールはありませんので、何通でも作成可能です。

実際、複数の遺言が発見される事案は、実務ではあります。

遺言を作成しない人は一つも作らないけれども、遺言を作成する人は、定期的に作成したりする人もいます。

このような場合、両方とも有効なの?それとも両方とも無効になるの?

そこで、今回は、遺言書が2通以上存在する場合の遺言書の効力と対処法について、弁護士が解説します。

目次

【結論】後に作成された遺言書の効力が優先する

 ・複数存在する遺言書のうち、内容が抵触(ていしょく)する部分は、後に書かれた遺言の効力が優先します。

 ※抵触とは、矛盾する、衝突するという意味です。

例えば、平成30年作成の遺言①「自宅土地建物を、長男にあげる」、令和2年作成の遺言②「自宅土地建物を、二男にあげる」という2通の遺言がある場合、「自宅土地建物」は1つしかないので、長男と二男の両方に相続させることは出来ません。このように、内容が矛盾する2つの遺言は、後に作成された遺言②が優先され、二男が自宅土地建物を相続することになります。

 ・遺言書の内容が抵触しない(内容がかぶらない)部分は、どちらの遺言書も有効です。

【解説】

1 遺言書はいつでも自由に撤回出来る

遺言者は、遺言書を作成した後、いつでも自由に遺言の内容を撤回することが出来ます。

公正証書遺言を作成した場合でも撤回することが出来ます。

撤回の方法は、新しい遺言書で前の遺言内容を書き換える、遺言書を破棄する、遺言書に書いた財産を処分してしまう等です。

公正証書遺言を、自筆証書遺言で上書き(撤回)することも可能です。ただし、自筆証書遺言が、形式要件を満たしており有効であることが前提です。

自筆証書遺言の有効要件については、こちら

2 参考例

 ここでは、遺言①と遺言②の2通があった場合について考えてみます。いずれの遺言も法的に有効な遺言であることを前提に考えます。

 遺言①2019年3月1日作成
「自宅土地建物は、長男・太郎に相続させる。預金1000万円は、二男・二郎に相続させる。」

 遺言②2020年2月2日作成 
「自宅土地建物は、妻ハナコに相続させる。」

 このように、2通の遺言があった場合、後に作成された遺言②の内容が遺言①より優先される結果、自宅土地建物は妻ハナコに、預金1000万円は二男・二郎に、それぞれ相続されることになります。

 遺言①は、自宅土地建物は、長男・太郎に対する相続させるという部分について、遺言②によって撤回されたとみなされます。

 このように、遺言は、後の遺言によっていつでも撤回することが出来るのです。 

根拠条文:
民法1022条 (遺言の撤回)
 遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。

民法1023条 (前の遺言と後の遺言との抵触等)

  1. 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
  2. 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

民法1024条 (遺言書又は遺贈の目的物の破棄)
遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。

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