【勘違い注意!】遺産分割協議の相続分の放棄は、相続放棄と同じではありません

問題

  父親の死後、家族(母、長男、二男)で遺産分割協議をしました。父親は、わずかばかりの貯金と自宅の土地建物を所有していましたが、同時に多額の借金もありました。
 そこで家族で話し合った結果、父親の相続財産は、長男がすべて相続することに決め、母と二男は、借金を含め、相続財産を一切相続しない内容の遺産分割協議書を作成しました
 ところが、その後、長男は、父の借金の返済が困難になり、自己破産することになりました。しばらくした後、債権者から、母と二男に対し、父の借金を支払うよう請求書が届きました。

 この場合、母と二男は、遺産分割協議で父の借金について相続しないと決めたから、父の借金を返済する義務はないと言って、借金の支払いを拒むことはできるのでしょうか?

目次

【結論】 

 母と二男は、債権者に対する借金の返済を拒むことは出来ません。それぞれ法定相続分に応じた借金の返済義務があります。

【解説】

 割とよくある勘違いですが、「相続放棄」と遺産分割協議での「相続分の放棄」は、法的に同じではありません。

 相続放棄は、家庭裁判所に申述することで行います。相続放棄した者は、最初から相続人ではなかったことになります。その効力は、第三者に対しても、主張できます。したがって、父の債権者からの借金の請求についても、相続人ではないので支払う義務はありません。

 一方、遺産分割協議での話し合いで、長男だけが財産を相続し、母と二男は借金等のマイナス財産も含めて相続しないという(相続分の放棄)結論に至っても、それは、あくまで相続人間でのみ有効なのです。債権者に対しては、遺産分割協議の効力は主張出来ません。したがって、母と二男は、法定相続分(母は2分の1、二男は4分の1)に従って、借金を返済する義務を負います。

 このような思いもしない事態にならないように、被相続人に多額の借金がある場合には、相続放棄をしておくのが無難です。相続放棄のやり方については、こちらの記事を参考にしてください。

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