示談あっせんのすすめ、弁護士費用特約ない場合の選択肢 長所と短所について

交通事故の被害にあったが、相手方保険会社と示談の話合いで折り合いがつかない。

 こういう状況になった場合、自分の加入している保険に弁護士費用特約がついていれば、弁護士に示談交渉を依頼するのが、精神的、経済的、時間効率的にもベストな選択です。

 一方、自分の保険に弁護士費用特約を付けていない場合、弁護士費用を支払うとトーナル利益でマイナスになるような損害額の事案では、弁護士に依頼するメリットはありません。

 一般的に、損害額が100万円に満たない場合は、自分で弁護士費用を支払うと損する可能性が高いといえます。

 このような場合において、過失割合や、損害額の計算などについて、相手方と対立していて、一歩も交渉が進まないとすれば、個人では何もする方法はないのでしょうか?

 相手方の言いなりになるしかないのでしょうか?

目次

示談あっせんとは

 このような場合に、「示談あっせん」を利用する選択があります。

 示談あっせんは、①公益財団法人日弁連交通事故センターと、②公益財団法人交通事故紛争処理センターという組織が、行っています

 裁判手続とは異なり、個人でも比較的容易に行うことが出来る手続きです。

示談あっせんについて、裁判と比較した場合の、長所と短所を説明します。

【長所】

1 費用が掛からない

  交通事故の示談あっせんについては、以下の2組織は、無料で利用できます。

 裁判手続きは、印紙代が請求額に応じて支払う必要があります。

  ⑴詳しい内容は、日弁連交通事故相談センターのHPへ

  ⑵詳しい内容は、公益財団法人交通事故紛争処理センターのHPへ

2 申立の手続が簡単

 申立の手続きが、裁判手続に比べると、簡単であり、個人でも出来ます。とはいえ、ある程度の国語力は、必要です。

 他方、裁判の場合、弁護士に依頼しないで、訴状と証拠を作成するのは、法律を勉強したことのない方では、至難の業です。

3 弁護士が担当するので裁判基準に近い金額での解決が期待できる

 示談あっせん手続は、交通事故に詳しい弁護士が双方の言分を聞いた上で、示談のあっせんをしてくれますので、損害賠償額について、裁判基準に近い金額での解決が個人でも期待できます。個人で相手保険会社と交渉するよりも有利な条件で交渉できます。

4 比較的短期間での解決が期待できる

 示談あっせんは、おおよそ3回から5回の期日で解決します。申立から約半年以内での解決が期待できます。

 他方、裁判手続きの場合、事件の内容により異なりますが、おおよそ半年から1年位かかります。

5 裁定は、相手方保険会社を拘束する

  示談あっせんの話合いで当事者間の合意に至らない場合、審査の申立てが出来ます。審査は、審査会(弁護士、裁判官経験者等の審査員3名以上で構成)で行われ、裁定案が出ます。
  被害者側は、裁定案を拒否することが出来ますが、相手方保険会社は、裁定案を拒否することは出来ず、拘束されます。
  したがって、審査会の出した裁定案に被害者が納得すれば、それで和解が成立するのです。

【短所】

1 時効中断の効力がない

 交通事故の消滅時効の期間は、原則として、人身事故で事故発生日から5年間、物損事故で3年間です(民法724条、同724条の2)。

 訴訟提起では、時効の完成猶予・更新の効力がありますが、示談あっせんには時効の完成猶予・更新の効力はありません。

2 全ての紛争に利用できるわけではない

 あっせんは、それぞれの組織で、利用できる場合が決められています。紛争の内容によっては、利用を拒絶される場合があります。詳細は、各組織のホームページで確認ください。

3 指定の場所に出向く必要がある

 示談交渉は、書面や電話でのやりとりで出来ますが、示談あっせんは、指定された期日に、開催場所に出席する必要があります。全国各地にあるわけではないので、お住まいの場所によっては、移動時間・費用がかかります。

まとめ

  以上が、示談あっせん手続の長所と短所になります。弁護士費用特約が付いておらず、かつ請求額が100万円にも満たない事故で、相手方保険会社との交渉に行き詰まっている場合には、検討する価値のある制度です。

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