【空き家問題】 土地の借主の行方が分からない場合の対処法

不動産問題

 みなさんの自宅の周辺に空き家はありますか?

 近年空き家が増加しており、社会問題になっています。

 そして、今後も核家族化の影響により、地方都市の空き家が増加し続けることが予想されています。

 空き家が増えるとどのような問題があるのでしょうか?

 今回は、空き家問題について、弁護士の視点から解説します。

目次

深刻な空き家問題

 近年、社会問題になっている空き家。

 法律上、深刻なのは、借地上に、借主が自分で家を建てて住んでいたケースです。

 以下の2つのケースが今後増えると予想されています。

 【ケース1】
借主が亡くなってしまい、借主の相続人が不明なまま、空き家が放置されているケース。

 【ケース2】
借主が夜逃げしてしまい、行方不明の状態で空き家が放置されているケース。

 いずれのケースにおいても、地代の支払いは、長い間、滞納状態となっています。

 地主(貸主)の要望としては、①地代の未払い分を請求したい、②契約を解除して、建物を撤去して更地にして土地を明け渡してほしい、の2つであることが一般的です。

 このようなケースで、地主は、どのような対処法があるでしょうか? 以下対処法について解説します。

1 対処法

 問題1の場合の対処法

  まず、⑴の場合は、相続人の捜索をします。

 相続人を発見した場合、相続人に対し、未払い地代の請求が出来ます。また、相続人との間で、借地契約の継続するか話合いをし、契約終了となる場合、建物の撤去などを請求できます。

 話合いによっては、建物を地主が買い取る、建物を現状のまま地主に引き渡すという解決もあります。

 一方、相続人となるべき人が、全員相続放棄をしている場合は、勝手に建物を処分することは出来ませんので、相続財産管理人選任の申立てを家庭裁判所にすることになります。

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 問題2の場合の対処法

 地代の不払いが長期間継続する場合、契約を解除し、土地の明け渡しを求めることが出来ます。

 しかし、土地上の建物や建物内の家財道具は、借主の所有物ですので、勝手に処分することは出来ません。建物や家財道具などの撤去を求めようにも借主が行方不明では、どうしようもありません。

 そこで、このような場合、不在者財産管理人を家庭裁判所に申し立てる必要があります。

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2 問題点  

 上記の対処法を実行した場合でも、実のところ地主の問題は必ずしも解決するとは言えないのが現状です。

 仮に、相続財産管理人や、不在者財産管理人が付いた場合でも、空き家の所有者に現金、証券等の換価可能な財産がない場合(実際ないことの方が多いです。)、建物の撤去費用がないので、撤去することを求めることは事実上不可能です。

 そのため、建物の撤去費用を土地の所有者である地主が負担せざるを得ない事態になります。 当然、滞納している地代の回収も、現実的に困難です。

 法律的には、賃貸借契約を解除した場合には、借主側に原状回復義務があります(民法545条1項、同621条)。

 しかし、現実的には、建物撤去義務を果たすためには、莫大な撤去費用が掛かります。撤去費用を請求しようにも請求する相手がいない(行方不明)のでは、成す術がありません。

 さらに、地主には悪いことに、相続財産管理人や不在者財産管理人の報酬や実費も、申立人の負担となります。選任申立時に予納金として裁判所に納付します。    

 このように、貸した土地上の建物が放置される問題は、今後増えていくことが予想されています。土地の所有者は、これまで土地を貸して得た利益以上の費用を負担するリスクがある問題です。

 現在、各市町村(一部除く)では、空き家に関する無料相談会を定期的に開催しています。弁護士や宅地建物取引士、司法書士等の専門家がチームで空き家に関する相談にのっています。

 空き家問題でお困りの方は、空き家の所在地の市町村にお問い合わせください。

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