友人に貸したお金を返してもらえない場合の対処法 金の切れ目は縁の切れ目

契約書

 友人にお金を貸してと何度も頼まれて、断り切れず現金50万円を貸しました。

 3か月したら必ず返すとの約束でしたが、期限が来た後も、友人は色々理由をつけてお金を返してくれません。

 ついには、友人は「借りたのは、30万円のはず。しかもそのうち5万円はすでに返済したでしょ。」等といい加減な事を言い出す始末。

 恩を仇で返すとはこのこと、あなたは、怒り心頭です。

 このように、友人にお金を貸したけど返済してくれないとの相談は、比較的よくある相談の1つです。

 友人からお金を取り戻すには、どうしたらよいでしょうか?

 もう貸したお金は戻ってこないのでしょうか?

 そこで、今回は、貸したお金が返済されない場合の対処法について説明します。

目次

貸したお金が返ってこない場合の対処法

1 対処法

  友人との話し合いでいつまで貸金の返済がなされない場合、法的手段を検討するほかありません。

 とることのできる法的手段としては、支払督促、調停での話し合い、訴訟を提起する方法などがあります。

  いずれの方法も、最終的には、債務名義を得て、強制執行できるようにする目的で行います。

  強制執行とは、給料や預金、自宅などの差し押さえをすることです。

借金の回収のために、報酬や手数料を払って、弁護士以外の人に相手方との交渉の依頼をすることは弁護士法72条に違反する行為です。違反すると、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられます。また、債務者の財産を、無断で取り上げて換金処分して返済に充てるのも違法な行為です(自力救済の禁止)。

  弁護士を依頼せずに、個人でできる方法は、支払督促か、調停での話し合いです。

  訴訟の提起(裁判)は、個人で行う方法としては、ハードルが高いです。個人で裁判をすることは、100%不可能とは言いませんが、裁判に関する書籍を何冊か購入し、熟読、理解、実践する能力が必要です。

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  もちろん、支払督促、調停、訴訟の提起のいずれも弁護士に依頼したほうが安心確実です。しかし、費用対効果を考えて、弁護士に依頼するかどうか決めた方が良いでしょう。
  弁護士を依頼すべきかは、以下の記事を参考にしてください。

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2 借用書のない場合

【結論】残念ですが、借用書を作成せずに、口約束で友人にお金を貸した場合、法的手段をとっても勝てる可能性は低いです。

 お金を貸す契約を、金銭消費貸借契約と言い、借用書を作成しなくても、実際にお金の貸し借りがあれば契約は有効に成立します(民法587条)。

根拠条文:民法587条(消費貸借)
 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる

 しかし、いつ、いくら貸したのか、いつが返済期限なのか、利息は発生するのか、誰が誰に対し貸したのか等の情報は、契約書やそれに類する書面を残しておかなければ、後になって当事者間で食い違いが生じるリスクがあります。

 手渡した現金は使ってしまえば、残りませんから、貸した事実を証明するのは困難です。

 借用書がないと、本件事例のように、後になって貸した金額に食い違いが生じた場合、立会人がいたとか、その時の状況を録音・録画していたというような証拠がない限り、全額返済を求めることは非常に難しくなります。

 借用書がないと、金額に争いがあるだけならまだマシです。最悪の場合、「お金を借りた覚えはない。」「あれは、もらったものだよ」等とお金を貸した事実さえ否定されてしまうリスクさえあるのです。

 こうなってしまうと残念ですが、裁判所で争っても、証拠不十分で、友人から貸したお金が返ってくることはないでしょう。友人との縁も切れる結果となります。金の切れ目が縁の切れ目です。 

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3 借用書のある場合

【結論】借用書のある場合、訴訟などの法的手段をとることで、相手方に対し、返済を求めることは可能です。

 借用書に、貸した金額や年月日、貸した人、借りた人の氏名が記載されていれば、「30万円しか借りてない」などという友人のとぼけた言い分は通らなくなります。

 なお、借用書の作成者は自分じゃない等と言われないように、借用書の借主欄は、必ず借りた人自身に署名押印させるようにしましょう。後日トラブルになる可能性があるので、代筆などは避けるべきです。

 また、「5万円はすでに返した。」という友人の言い分は、簡単には通りません。
 なぜならば、法律上は、お金を返した事実は、借りた側(友人の方)で証明しなくてはならないからです。
 すなわち、あなたは、お金を返済してもらってないことに関する証拠までは必要ありません

 逆に言えば、返してもらったのに、返してもらってないととぼけることも出来てしまいますが、それはやめておきましょう。

 仮に、裁判で嘘がばれると、あなたの主張全体の信用が著しく損なわれてしまいます。

4 相手方が返済不能のリスク

 借用書があるから絶対に大丈夫というわけでもありません。

 ない袖は振れぬということわざがあるように、友人が経済的に困窮し、現金がなく現実に返済できない状況では、どうしようもありません。

 たとえ、裁判で勝訴判決を得ても、相手方に差し押さえる財産がなければ、現実的に貸したお金は戻ってきません。

 最悪の場合、友人が自己破産をして、あなたの貸したお金を法律で返す必要のないものとされてしまう可能性もあります。自己破産で借金の返済をしなくてよいという裁判所のお墨付きを「免責」と言います。

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 そこで、お金を貸す場合は、相手の返済能力をよくよく見極める必要があります。

 ただし、経験上、友人にお金を借りる人の多くは、あなたに借金の依頼をする前に、すでに銀行、消費者金融、親族などから借金をしており、借りる相手がなくったため、友人であるあなたに泣きついている場合が多いです。ですから、友人に借金を依頼するような人は、すでに返済不能の状態であると覚悟してください。すなわち、自己破産するのは時間の問題なのです。

 そこで、場合によっては、金融機関や質屋のように、お金を貸す際に、不動産や自動車、貴金属など担保をとるのが良いです。担保にとれる財産があればですが…

まとめ

 以上、友人に貸したお金が返済されない場合の対処法について述べました。何だ結局、あきらめるしかないのかと感じた方も多いでしょう。
 正直に言って、読者の方に希望を与えるような内容ではないですね。
 しかし、金融業者でも、親戚でもない個人に対し、借金の依頼をしてくる人がどんな状況にあるかは冷静に考えてもらえれば分かると思います。

  以下、本記事のポイントについてまとめてみましたので参考にしてください。

  • 人にお金を貸すときは、必ず借用書を作成すべし
  • 裁判で負けないためには、証拠が重要
  • たとえ借用書があっても、貸したお金は返ってこないリスクがあると覚悟すべし
  • 金融業者でも親戚でもなく、友人に借金の依頼をする人は、すでに返済不能の状況である可能性が高いと心得るべし
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